感染症のアウトブレイクによる危機と緊急事態におけるリスクコミュニケーション


 この文章は米国疾病予防管理センター(CDC)が公表している「CERC in an Infectious Disease Outbreak(感染症のアウトブレイクによる危機と緊急事態におけるリスクコミュニケーション)」を日本語訳したものです。感染症の性質を理解した上で、感染症のアウトブレイクに関する情報発信において重要な視点を示しています。

 診療ガイドラインのように構造化された科学的根拠に基づいて体系的な手法で作成されたものではありませんが、米国に加え、WHO、欧州、オーストラリア、インドなどではSARS(2003年)、H1N1インフルエンザ(2009年)、MERS(2013年、2015年)、エボラ(2014-2015年)、ジーカ(2015-2016年)、ニパ(2018年)などのアウトブレイクなどを踏まえた推奨をまとめた文書が作成されています。

 日本においては、感染症のアウトブレイクに関する報道や情報発信について、方法や対応についての見解や指針が示されている一方で、その内容や目的、効果や影響、罹患者への対応、回復(復興)に向けた取り組み、安全の確保、尊厳の尊重、人権とプライバシーの保護、など包括的に定めたものについての議論が十分なされていません。

 この文書を参考に、国内での感染症報道とメディアのあり方について、どのような課題があるか、どのような役割や協働が可能か、など、多くの方に関心をお持ちいただくことを願っています。

メディアドクター研究会
2020年2月

ご利用にあたって:この日本語訳は、専門家などによる内容および翻訳のチェックを受けて作成していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、メディアドクター研究会ウェブサイトの「お問い合わせ」からご連絡ください。なお、CDCでは、不定期に更新と改訂が行われています。
 

PDF版
 

感染症のアウトブレイクによる危機と緊急事態におけるリスクコミュニケーション
(メディアドクター研究会仮訳)2020年2月26日作成 ver1.0

原文/originalCERC in an Infectious Disease Outbreak

https://emergency.cdc.gov/cerc/resources/pdf/CERC_Infectious_Diseases_FactSheet.pdf

[Page last reviewed: January 23, 2018, Accessed: February 26, 2020] 

The U.S. Department of Health and Human Services, or Centers for Disease Control and Prevention do not currently endorse any foreign-language translation of CDC information and no such endorsement or recommendation should be inferred.
米国保健省、米国疾病予防管理センター(CDC)は、現在、いかなる国の翻訳情報にも関与しておらず、この翻訳はCDCによって支援されたものではありません。

 

1)初めが肝心(Be First)
 感染症のアウトブレイクに関する情報を速やかに共有することで、感染症のまん延をくい止め、感染や死亡をも防いだり減らしたりすることに役立ちます。多くの人々は緊急事態で耳にする最初の情報を記憶しています。だからこそ、初めに受け取る情報は健康や医療の専門家からもたらされるべきです。
・アウトブレイクや特定の感染症の原因が分からない場合であっても、まず入手可能な事実を共有しましょう。これによりうわさ話が先に広まらないようにするのに役立ちます。
・感染症によるサイン(徴候)と自覚症状、どのような人にリスクがあるのか、治療とケアの選択肢、そして受診する時期についての情報を共有しましょう。

2)正しい情報を(Be Right)
 正確さが信頼性を決定づけます。情報には、現時点でわかっていること、わかっていないこと、そしてその格差(ギャップ)を埋めるためになにがなされているのか、そして私たちにどんなことができるか、についての内容を含めるべきです。
・公衆衛生上の通知(メッセージ)と医療上の指針は、互いに補完し合うものでなければなりません。例えば公衆衛生当局は、もし医師が重篤な人を診療していて薬が尽き、診療に対応できないときには、広く人々に受診するように勧めるべきではありません。
・常にその話題の専門家にファクトチェック(情報の吟味)を受けるべきです。なんらかの間違ったメッセージが有害な行動を引き起こし、将来のメッセージに対しての信頼を失うことになりかねません。

3)信頼を得る(Be Credible)
 誠実で、時宜を得ており、そして科学的根拠があることが、受け手である人々の情報や指針への信頼を高めます。問題に対して十分な回答をもっていないときは率直に認め、解決に向けて適切な専門家と連携しましょう。
・確かでないことについて、確約してはいけません。例えば利用可能性が確定していないのに、「ワクチンや治療薬が供給される」と断定してはいけません。
・臨床医は、報道や市民向けのイベントにおいて、医療上の質問に答えましょう。

4)共感を示す(Express Empathy)
 感染症のアウトブレイクは恐怖と日常生活の破綻を引き起こすおそれがあります。未知あるいは新興の感染症はさらに不確実さや不安をもたらします。人々が何を感じているか、何を求めているかを認識することは、推奨を行うときに受け手の人々の視点を考慮していることの裏付けになります。
・例えば、2018年のインフルエンザシーズンでの記者会見において、CDC(米国疾病予防管理センター)の長官代理は、「私は、多くのメディアの方々がこのインフルエンザシーズンについて心配しており、愛する人を失った胸が張り裂けるような話に接していることを理解しています。」と述べました。

5)行動を促す(Promote Action)
 感染症のアウトブレイクにおいては、予防についての人々の理解と行動が、まん延をくい止めるための鍵になります。
・行動のメッセージは簡潔に、短く、覚えやすいものにしましょう。例えば、「咳エチケット」などです。
・障がいのある人や、外国語を使用する人など、情報へのアクセスが困難である人へもさまざまな方法で確実にメッセージが伝わるようにする必要があります。

6)敬意を示す(Show Respect)
 無防備であると感じたときこそ、敬意のこもったコミュニケーションがとりわけ重要です。敬意を伴うコミュニケーションは、協調関係と相互理解を促します。地域のコミュニティや地域のリーダーシップによりもたらされた課題や解決策について、積極的に耳をかたむけましょう。
・病気に対する文化的な信条や考え方、対応の違いがあることを踏まえて対応しましょう。相互の理解を促し、コミュニティと連携しましょう。
・恐怖や心配から目をそらしてはいけません。話し合いや質問の機会を設けましょう。

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